1日一回の外歩きの他、キッチンに座って中庭を眺めているという勝手気ままな私でも、日々の昏いニュースに心が重たくなる。
舞踊評論家の石井達朗さんから頂いた『高所綱渡り師たち』(青弓社刊)を、ハラハラドキドキしながら読了し、久しぶりに気持ちがスッカーとした。
「いまやこの星の住人はIT(インフォメーション・テクノロジー)という人口の森の住人となっている。学校教育から政治・経済、スポーツにいたるまでAIはまるで毛細血管のように行き渡り、その恩恵に浴さずにはもはや生活できない。………AIは監視社会を加速し、迷惑行為や多様な犯罪を増殖し、戦争のための戦略を更新しつづける。
そんな時代にあって、デジタルテクノロジーが及ばない最後の砦が生身(なまみ)の体である。………野外でおこなう高所綱渡りは、一本のワイヤーの上を生身の体が歩く、デジタルが遠く及ばない領域である。………長く重いバランス棒を両手に抱え………左右を微調整するように………一歩一歩進む。体の五感を全開にしてこそ可能な高所綱渡りは、まさにからだはからだであり、それ以上でもそれ以下でもないことを見せてくれる。…………」 ( 著者の「あとがき」から抜粋)
紫陽花が咲き出した。梅雨入りかな? 今日も雨模様。朝の外歩きは断念……では、前に曲った重たい頭を肩にのせ、危ういバランスを保ちながら、家のなかを一歩一歩あるこう。