ゼルマの詩

ベル・エポック(Belle Époque)=美しい時代………敗戦前夜に生まれて80年の間、今日まで、戦争もなく、ひどい天災に見舞われることもなく、自由に、楽しく、わがままに、いいたいことを言って、生きてこられたのは、偶然にわたしに与えられた「Belle Époque」というもの。幸いに感謝しなくては!

でもこれからは、わからない。世界は懲りずに憎しみあいを続けている。19世紀末の「Belle Époque」が世界の崩壊に傾いて行ったように………地球船は人間をのせて何処にむかってくのだろう…………。

強制収容所で死んだ、チェルノヴィツ生まれの少女、ゼルマ・M=アイジンガーが15歳で書いた詩。

 色彩
雪白の雪の上はとても青く
緑の樅の木々はとても黒く
静かにかけていく鹿が
どうしても断ち切れない悲しみのように
灰色にみえる

雪の調べに足音がぎしぎしとまじる
風が白いヴェールをかぶった木々に
雪片を吹きもどす
ベンチが夢のようにたたずんでいる

光たちが落ち 影とたわむれるー
果てしのない輪舞
遠くの灯火が雪明かりから借りた
くすんだ光をまたたいている      1939年12月18日 15歳4ヶ月

ゼルマの生地は、現在のウクライナ。戦争はいつ終わるのだろうか?