毎日、イスラエルとパレスチナのニュース。あの奇怪な壁に囲まれて、爆撃あとの瓦礫の中で生きている、子どもたちやお年寄り、体が不自由な人、重篤な病人………どうやって退避できるだろう……食べるものもなく、水もない、クスリも………生きていくための何もかも不足した状態で………。
今から50年前、1973年10月に第4次中東戦争が勃発した。その翌月に次男禮示が生まれ、私は可愛い我が子を胸に抱き幸せに包まれている最中、何やら騒がしくなってきて「トイレットペーパーが無くなる………」という噂がサッと病室中に広がった。我が子を抱えながら、どうしよう、と不安だったが、どんなことがあってもこの子を守るぞ、と心の中で言っている自分を覚えている。
パレスチナとイスラエルの争い、ウクライナとロシアの争い、人間同士の争いはいつ終わるの? いつも犠牲になるのは幼い子どもたち、弱い者。心が痛む。
ベルトルト・ブレヒトの悲しく、美しい『子供の十字軍』は「1939年 ポーランドにむごたらしいいくさがあった。」と始まる。安らぎの国を求めて「砲声もなく 銃火もなく すてた土地とは別天地ー / 行列はかぎりなくふえて」55人の子どもたちが、あてどもなくさまよい、つかれはて、おしまいに「ポーランドでは その正月 / 犬が一ぴきつかまった。 / やせこけた首に一枚の / 紙の札がかかっていた。/ 助けてください! と書いてある。 / ぼくたち道にまよっています / みんなで五十五人です / この犬についてきてください。/ 撃ち殺さないで。 この犬だけが / ぼくたちの居場所をしっています。 / 犬が死ねば / ぼくたちもうおしまいです。 / 字は子供の手で書かれていた。 / 百姓たちがそれを読んだ。 / 一年半もまえのこと / 犬は飢え死寸前だった。」 (矢川澄子訳)
1939年9月1日ドイツがポーランドに侵攻して、第二次世界大戦が始まった。ウクライナ、パレスチナ………十字軍の昔から今もまだ戦争は続いている。