わたしの10歳年上の長姉は、生前大晦になると必ず黒豆を煮て、弟妹の家族みんなに分けるのが彼女の喜びだった。艶やかな漆黒の黒豆、それはそれは美味しかった。その姉が亡くなってからもう何年になるのだろうか?
今日は2024年の大晦日。朝日が高くなってから、史跡公園周辺をいつも通り車椅子を押してひと回り。
車も少なく、人影もなく、何処の家も音もなく静まり返っている。1人だけ、スーツケースを引っ張って分バスの発着所に急ぐ男の人とすれ違った。仕事納めをして地方の実家に帰省するのだろう。
外歩きから帰ると、あきらがキッチンのガラス拭き、玄関の掃除………に取り掛かる。わたしは何もできない。
いつもキッチンに座って中庭を眺めるだけのわたしは、新しい年になっても何も変わらず、キッチンに座って中庭を眺める日々をおくるだろう。
窓拭き、外回りの掃除を終えたあきらがキッチンに顔を出した時、中庭の杏の木、天使館の白い壁が、静かに闇の中に消えていくのを、透明になったガラスをとおしてみえた。
帽子をかぶった自画像 2024/12/31