小さな小さな歩みでも……。

もう11月かぁ〜。アドベント…酉の市…クリスマス…おおつごもり…どんどん昼間の時間が少なくなり、夜の時間が長くなる。
 自分でびっくりするほど、様々なことができなくなってきた。例えば、今日は料理しよう!と張り切って取りかかるが、包丁がうまく握れず、野菜を刻むのに四苦八苦。お皿を取り出すのも、脱臼した指は使い物にならず………というわけで、出来上がるまで長時間を要す。やれやれと思うのだが、1日一つ何か生み出すと、やったぁ〜という気分になり、何かが動く。ほとんど自己満足の小さな小さな歩みでも、自分が自分になれて嬉しい。そんな時、自分も、周りも、限りなく愛おしく、美しくなるから不思議だ。
毎日、そうあってほしいと願うのに、そう、うまくはいかない。日々の天気のように、晴れたり曇ったり。
   山羊
ぼくは山羊にはなしかけた。
草地にたった一匹、つながれていた。
草を食べあきて、雨にぬれ、
めえめえと啼いていた。
あの啼き声は、ぼくの哀しみにそっくりだった。
だから、ぼくは答えてやった。まず冗談半分に、
また、哀しみは永遠だし、
ひとつの
声、おなじ声しかないのだから。
その声が、淋しい山羊の
なかで、啼いていた。
ユダヤの顔をした、山羊のなかに、
この世のすべての痛みが、すべての
人生の、争いが、聞こえた。
         ウンベルト・サバ『家と田園と』より/訳・須賀敦子