朝目覚めると………カーテン越しに明るい日差しがいっぱい………歩きたい!
右足の親指の関節が変形して火山のように盛り上がり唯一の靴が履けなくなった。朝の外歩きができない。どんどん脚の力が萎えてくる。「歩こう」という意思も薄くなる。枕に重たい頭を委ね……漆喰の天井を眺めていると………体がゆったりして………日に日に混迷していく世界を思うと………もう歩かなくてもいいかな………などと知らぬ間に考えたりしている。あぶない!
中庭の杏の枝に薄桃色の蕾がほころびかけて来た………史跡公園の桜を見にいかねば。
指を痛めない高齢者用の室内ばきを履いて………車椅子につかまり………叡と一緒に外に出る………おお、なんて冷たくて美味しい空気でしょう!「ジュジュ」と四十雀が鳴いている。真っ青の空に綿毛のような白い雲が一点浮かんでいる。
私の足に合った靴を装具士さんが作ってくれる。復活祭の頃にはできるだろう。そうしたら、新しい靴を履いて、車椅子にのって、3月4日から国立近代美術館で始まっている「ヒルマ・アフ・クリント展」を観に行こう。