星空に包まれて………。

冷蔵庫の製氷器が故障、暖房が点かない………次から次と故障し始める………機械に意地悪されているみたいに。
幸い冬場だし、大寒とはいえ3月並みの暖かさ………氷も暖房も切羽詰まってはいないので………「即日解決!」なんてネットに出てくる情報に惑わされず解決できた。よかった!

シュトゥットガルトに住んでいた頃は、もちろんネット社会なんてなかった。
中央駅から市電で銀の森を抜けてリーデンベルクの駅で降り、イゾルデクルツ通り52番の我が家に向かう途中、左手に大きな老人ホームの高層ビル、右手には広い草地があった。ある冬にしては生暖かい春を思わせる夜、その広い原っぱに小さなサーカス団が休んでいた。団員たちは思い思いの格好をして、タバコをふかしたり、草地に寝っ転がり、満天の星空を眺めたり。檻の車に動物たちもいたと思う。原っぱの向こうは漆黒の森。目を凝らして見ていると………アレ、アレ、アレ………星空から、スル、スル、スル………金のブランコが降りてきて、薄いピンクのワンピースを着た痩せっぽちの女の子が、星空に包まれ夜風に揺れて、思いっきりブランコを漕いでいるのを見た。
翌朝、日が昇るとすぐに草地に行ってみた。サーカス団の車も人もいなかった。もちろん、星空からのブランコなんてあるわけない。でも、アレは夢だったの?

今でも心の中にはっきり浮かぶ情景。もう半世紀近く前のことなのに。