なんという暑さ! クーラーの効いたキッチンで中庭を眺めながら、本でも読むか。先ずは、千章さんが持ってきた雑誌『異文化の交差点・イマージュ』2021夏号をパラパラめくる。金満里さん主宰の劇団「態変」の刊行誌。54頁「大野慶人の言葉 第2回幼少時代②………大野圭子」を読む。軍服姿の大野一雄先生、赤ちゃんを抱いているちえさん、その横に赤ちゃんのお兄ちゃん、出征前の大野家の家族写真だろう。大変貴重な一葉。次女の圭子さんが、父親の慶人さんの言葉を丁寧に綴り伝えてくれる。
舞踏とは何か。
「まず、あなた自身が作品であるということ、あなたの生きてきた人生を大事にして、あなたが作品なんですよ」
晩年の大野慶人の稽古は必ずこの言葉から始まりました。
「外にテーマを求めるのでなく、『私が私に出会う』」。
いとも簡単に、難題を突き付けることからお稽古は始まっていたのです。
ー大野圭子さんの文章から抜粋ー
キッチンの椅子に座って、すっぽり懐かしい記憶の世界に浸り………外の暑さもわすれて………温かいひと時………角野隼人の弾くショパン「ピアノ協奏曲第一番ホ短調」を聴く…………明晰で透明な一音一音………美しい。
さあ、冷蔵庫で冷やしておいたカットスイカを食べよう。暑い一日も暮れていく。