白石かずこさんのこと

白石かずこさんが亡くなられた………温かい何かがスゥーと飛んでいってしまった。哀しいな。でも、今ごろ、遥か彼方の星空で澄子さんと再会しているに違いない。

雑誌『詩と批評』の原稿をいただきに西荻に白石かずこさんを訪ねたときのこと………暑い夏の日で、アパートの扉を開けて、風通しのいい台所の丸椅子に片足を乗せ、短パン姿で、奥から聴こえてくるジャズのリズムにカラダをスゥイングさせて詩を書きながら、ドキドキするわたしをスゥーと温かく迎えてくれた。

寒い冬の日、中央線の西荻窪からミッキーマウスがいっぱいついた真っ白なふわふわのオーバーを着た白石さんが乗ってきた。ちょうど乗り合わせていたわたしを見つけるとワァ〜と近づいてきてハグする………私はびっくり………その自由さ、温かさ。

渋谷のカフェで、アキラも交えて3人でおしゃべり。かずこさんいきなりスカートを持ち上げ「お母さんの介護中なの………私、不器用だから湯たんぽのお湯をこぼしてしまったの……咄嗟にお母さんの方でなく自分に向けて………お母さんが火傷しなくてよかった………でも、こんなに腫れてヒリヒリ痛いの」とあたり構わず、太腿を見せてくれた………あぁ痛そう!

「スミコ、スミコ」と矢川澄子さんが大好きだったかずこさん。澄子さんの出版記念会で、巻紙に書いた長詩を張りのある美しい声で読み上げた………まっすぐに澄子さんに向かって。

アキラが女性5人を振り付けた作品「今晩は荒れ模様」は白石さんの詩集のタイトルからいただいた。世田谷パブリックシアターに公演を観にいらしたかずこさん。アキラの頬にスゥーと接吻して「嬉しいわ」と囁いた。

「ウーマンリヴの走りは、私」とそっとわたしの耳に囁いた白石かずこさんの声の響き、温かさ。忘れられない。