今日は、昨日と打って変わって寒い。でもこれが本来の寒さだ。朝、外に出ると、薄っすらと陽が差して空気がおいしい。角を曲がると桜の樹々もすっかり葉を落とし、道端に黄色の朽葉が風に吹き寄せられて溜まっている。露口さんの前で、薄紫のジャケットを着た中年の女の人が箒で枯葉を集めていた。亡くなった君子さんのところにピアノを習いにきていた少女かしら? いつもレッスンでソナタを弾く彼女のピアノを聴きながら子育てをしていたのを懐かしく思い出した。しばらくいくと、一羽のカラスが私の方に寄ってきた。漆黒の大きなカラス。ポーの大鴉『never more』が心に浮かぶ。喪失と悲しみ………現在と永遠………美しく恐ろしい………突然、私に寄ってきたカラスが大きな翼を広げて飛び去っていった。
午後、スウェーデンに住む大植真太郎くんがプリンを持って訪れくれた。舞台の仕事で来日中とのこと。叡と久しぶりに話している間、わたしはヘルパーさんの山内さんに食事を作ってもらいお喋りしながら、美味しくいただく。
夜、柄谷行人の『定本 日本近代文学の起源』の続きを読む。頭の中に大きな時間が流れ込んでくる。