「マルテの手記」

いつになったら、梅雨が明けるのだろうか? 今日も雨降り………。何か明るいニュースはないかなぁ〜。まだ30歳なのに突然自殺した青年俳優のこと、筋萎縮症に苦しむ女性を自殺幇助し逮捕された医師達のこと、増え続けるコロナ感染者の数。「人間は生まれた瞬間から死に向かって歩き出す」なんてよく言うことだけど、からだの中に抱えてきた自分の死が、自分のからだで支えられないほど重たくリアルに感じられるようになったら………死を実行するほうが、生きるより容易いのだろうか?などと頭の中で思考を空回りさせているより、友人に電話しよう。
「わたし、死ぬのはいいとしても、コロナでは死にたくない!」と訴えると「同感!苦しいのは嫌よね」と、私より10歳も年長で、その上、心臓疾患を抱える私のお姉さん的存在の友だちの、明るい温かな声が返ってきた。それにしても、年若い人たちの死ー自死ーのニュースを聞くと、心が痛み哀しくなる。
         
生きることが大切だ。とにかく、生きることが何より大切だ。
………………
詩はいつまでも根気よく待たねばならぬのだ。人は一生かかって………、まず蜂のように蜜と意味を集めねばならぬ。そうしてやっと最後に、おそらくわずか十行の立派な詩が書けるだろう。詩は人の考えるように感情ではない。……… 詩は本当は経験なのだ。………
               R.M.リルケ「マルテの手記」 大山定一訳

「マルテ・ラウリツ・ブリッゲの手記」(Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge)
「マルテ・ラウリツ・ブリッゲの手記」(Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge)