お正月2日

昨年の暮れの25日に10歳年上の姉を亡くした。翌26、27日は天使館で、ピアニストの悠治さんとアキラのセッション、28日は、2月の公演「櫻の樹の下には」の稽古、引き続き、みんなで年の終わりの稽古納め乾杯。30日に亡くなった姉のお通夜、31日野辺送り。コロナ禍以来、時が動いたり止まったりの日々だったのに、突然の姉の訃報に、想いを馳せる時もなく、新しい年が明けた。
そして、今日は年が明けて2日目。私はいつものように、キッチンの椅子に座って、阪本さんに頂いた柚子茶を飲みながら、10歳年上の姉は、やっぱり立派だった……都立高校を優秀な成績で卒業したお父さん自慢の長女は、洋裁和裁お料理と花嫁修行で、小学生の私に、フリルのついた可愛い花柄のワンピース、ローウエストのちょっとおませな木綿のジャンバースカートなど、よく縫ってくれたなぁ……それなのに、末っ子の私は姉と正反対で、親きょうだいを心配させっ放しの逸れもので生きて来てしまったな。とうの昔父母を亡くし、下の姉も亡くし……、しだいに淡く消えていく冬の光をガラス越しに眺めていると、私のカラダのなかに決して交わることのなかった両親と姉たちの存在がスポッと入ってきて………。これでよかったんだ!と妙に深く納得した。
さて今年も、彼方から吹いてくる温かい風をいっぱい吸い込み、一歩一歩あゆんでいこう。
  すべてはすぎ去るものならば………
 すべてはすぎ去るものならば
 すぎ去るかりそめの歌を作ろう。
 わたしたちの渇きをしずめるものならば
 わたしたちの存在のあかしともなろう。
 わたしたちから去って行くものを
 愛と巧みをこめてうたおう。
 すみやかな別れより
 わたしたちみずからがすみやかな存在となろう。
          R.M.リルケ 『果樹園』より  高安国世訳