はるとなり

詩人の高橋睦郎さんが、朝日新聞に書かれた文章を読んで、春隣(はるとなり)ということばを教えて頂き、何かとてもうれしい気分になった。
何故だろう?睦郎さんは「春隣と呟くだけでなんとなく華やいだ気分になる・・・」と書かれている。ほんとうにそうだ。
先日、生協でライラックの苗木を買った。花が咲くまで3年はかかるらしい。我家の、狭くて日当りも悪い庭で、果たしてその苗木は育つのか、3年待てば、私が夢見ているような美しい花が咲くのだろうか?いささか心細い。
でも我が貧しい庭には、既に思いつくまま植えられた十二、三本の木々が、手入れも施されず、栄養も与えられず、負けずに頑張って生きている。そして、寒い冬の日に、そっと芽を膨らませはじめる。まるで、春はもうすぐ隣、と私に密かに教えてくれるかのように。
「はるとなり」の言葉のぬくもりは、目に見えないひかりのぬくもり、いのちのぬくもり。
毎朝、不細工な庭を眺め「世話もしないで、いただくばかり、ゴメンね」と心の中で呟いて、私の一日は始まる。