ふにゃふにゃの指

今日は、寒い。いつの間にか、自分の手の変形が驚くほど進んでいるのに気がついた。始まりは20年ほど前の3月のこと、右手の中指が脱臼して、みるみる間にふにゃふにゃになってしまった。その時、私は頚椎固定手術を受けた後で、首にハローベスト(頚椎固定器具)を装着して病室のベッド上で寝ながら自分の指を眺めていたのだ。直ぐ、主治医にぶらぶらになった中指を見せると「よしよし、当て木でも当てて縛っとけ」と取り合ってくれない。指の関節より頚椎の方が重大事なのだろう。お陰で、今までもふにゃふにゃのままだ。
それから20数年、ゆっくりゆっくりと骨の崩壊が進み、今はマシュマロみたいに柔らかい小さいお団子が重なっているような掌に、ふにゃふにゃしたクラゲのような指が付いている手となった。それでも、私の思いをiPadのキーボードにペンシルで打ってくれるからありがたい。
このちょっと滑稽で可笑しい形の、私の愛しい指たち、いつまで私のために働いてくれかい?
昨夜、浅見裕子新作舞踊「コーボルト・スペーシー」を、天使館で観た。暗黒の地中からボソボソと地上に這い上がってきた四人のコーボルトたちが、一斉に色を纏い、カラダに音を響かせ踊る姿を観ているうちに、私の修理不能のカラダの内も、一緒に踊った。
いつの間にか消えてしまったクリスマスローズが、庭の片隅で一輪咲いている。クロッカスも水仙も伸びてきた。小鳥たちも飛んできた。風が吹いている。

クリスマスローズ。庭の片隅で咲いていた。
クリスマスローズ。庭の片隅で咲いていた。