今年も、カサブランカが咲いた………

秘めやかな雨の梅雨日も、やがてくる夏の太陽が予感されて、昔は嫌いではなかった。荷風の「梅雨のあとさき」も、なぜか梅雨の頃になると題名に惹かれてか、読みたくなったりしたもんだが、昨今の日々は、押し付けられた静寂の下で、じっと我慢している自分がいる。先が明ける兆しが見えず………。
シモーヌ・ヴェイユの「重力と恩寵」を読む。
『代数』
………人間を自分の手でつくり出したものの奴隷とするにいたった罠を、確実な方法で明るみに引き出そうと努力すること。方法的な思考や行動の中に、いったいどこから無自覚なものが忍びこんで来たのだろうか。原始生活への逃避は、怠惰な解決法である。わたしたちが現に生きているこの文明のただ中で、精神と世界との原初的なつながりをふたたび発見しなければならない。……… わたしたちはみな、獄中で殺されるのを待ちながら、竪琴をひく練習をしていたソクラテスとよく似た境遇におかれてる………
ともかくも、よく生きたといえるように……… (田辺保訳)
まだ降り続いている雨の中で、気がつくと、伸び放題の雑草の合間から、数年前に植えたカサブランカが、今年も花をつけていた。初めは、純白で、もっと大輪だったのに、年を追うごとに花弁にうっすらとピンクを載せ、小振りになっていく

雑草の間の百合。さすがに強く、美しい!
雑草の間の百合。さすがに強く、美しい!