静かな日。もっぱら、雄大に広がる夏の青空を眺めて過ごす。一瞬もとどまらない白い雲。あそこはどこにあるの?…………あるの、ないの?…………恐ろしくなったので、考えることをやめて、ベットに私を置き去りにして、あの青空の白い雲と一緒にふわふわ浮いてみよう。
あそこはどこにあるの? あるの、ないの? その答えは、一向わからないけど、雲と一緒にふわふわ浮いた時の私の心は、喜び、生き生きし…………あの恐ろしさは、どこにいったのだろうか………と、私の巣でぼんやり横たわっていると………友だちになったカラスさんが………ヒサコサン、ヒサコサン、相変わらず、自分勝手なお思い込みが強いね。早くおやすみ。もう直ぐ、あなたの嫌いな夜の闇がやってくるよ…………とカゥカゥと鳴きながら、西に向かって飛び去っていった。
「白い雲」 ヘルマン・ヘッセ/高橋健二訳
おお見よ、白い雲はまた
忘れられた美しい歌の
かすかなメロディーのように
青い空をかなたへ漂って行く!
長い旅路にあって
さすらいと悲しみと喜びを
味わいつくしたものでなければ、
あの雲の心はわからない。
私は、太陽や海や風のように
白いもの、定めのないものが好きだ。
それは、ふるさとを離れたさすらい人の
姉妹であり、天使であるのだから。