目が覚めると、天窓から朝日が差し込んでいた。雪ではないのね……昨夜の天気予報では、都内でも夜半には雪……日本中が厳しい寒さに見舞われる……と。

長男が生まれた1970年の1月も極寒の日々だったのを思い出す。出産予定日は、モーツアルトの誕生日1月27日とあって、ぜひその日に、と密かに期待していたのに見事に外れ、アキラも出産のためにオフにしたキャバレーの仕事も致し方なく再開し、立春の日に東北に出かけてしまうと、その夜、やっと陣痛が始まった。以前、義母の君子さんが「障子の桟が見えなくなるくらいまで我慢して……」と、言われていたのを思い出し、波のようにやってくる痛みに、不安と頑張りがないまぜになった極寒の冬の一夜を過ごし、しらじらと夜が明ける頃、近所の産院で男の子が生まれた。

節分の日。春の始まり………とはいえ、さあそれから1ヶ月が大変。寒い夜中の慣れない授乳。寒さと眠さとの闘い。子育てってこんなに大変なんだ……春が待ち遠しいな………でも、私の体内にいた赤ちゃんは、世界を全幅に信頼して私の隣で眠っている。今、全く無力のこの子を護ってあげられるのは、私だけと思うと愛しい気持ちが私の体を満たす。

昔も今も、戦争時でも平時の時でも、命の誕生の痛みと喜びは変わらない。