台風は過ぎたというのに、秋の空は……? 秋の長雨……?
キッチンまで出掛けて、山崎佳代子『そこから 青い闇が ささやき』ーベオグラード、戦争と言葉ー を読む。
「戦争が始まるというのは。私たちを取り巻く空気が一度に汚れて重たくなっていくことだ。どこを向こうが、この空気に晒される。呼吸を止めるか、ここを去るしかない」
初めて、山崎佳代子さんにお目にかかった時のこと。彼女は、ふらっと、京都で公演中のアキラの楽屋に入ってきた……ほのかな春の花の香りを纏って微風のように。嬉しかった。
「…………詩とは、静かな光に身を捧げること。そうでしょう?………」山崎佳代子『ベオグラード日誌』より。
……ことばは光、光はいのちだよね……と思う。
彼女の新しい詩集『黙然をりて』(書肆山田)の中から、
「 みえない水」
山の頂から流れ / 長い旅をした水は / 紙のコップに注がれ / 遠い国から歩き続けた / こどもの瞳をうつしている
ああ美味しい / 無垢な言葉に / みずは息還り
はじめて聞いた / 異国の言葉に震え / 桃色の喉を通りすぎ / きゃしゃな身体の中を / 歓びながら下っていった
灰色の空を眺めながら、旧ユーゴスラビア崩壊から今もなお、ベオグラードに住む山崎佳代子さんを想いながら………今なお続くウクライナの戦争………あれこれ想いながら………心の中の言葉の水が枯れないように………細くて小さい流れでも………止まらないように……私の今日の一日。
「