懐かしいトウヒの香り

アキラの謡の先生の奥さまから、拙著「畑の中の野うさぎの滑走〜」のお礼に入浴剤をいただいた。美しいガラス瓶の蓋を開けると、ドイツトウヒの香りが漂ってきた。あぁ懐かしい………しばらく目を閉じて、カラダいっぱいドイツの匂いを聞く。

今頃ドイツは、どこの家庭も復活祭を迎える準備で大忙しだろう。街のお菓子屋さんの店先には、色とりどりに彩色した卵、大小さまざまなうさぎのチョコレートが並び………あかるい春の陽光のもと、ライラックの濃淡、真っ黄色のミモザ、純白のユキヤナギ……あちこちに溢れ咲いて……あぁ行きたいなぁ………ダメだ!………でも、今夜は、頂いたトウヒの精油で森林浴を楽しめる……嬉しいな。

一日一回は歩かなければ………夕方、桜の様子を伺いに………薄墨色に暮れていく空のもとに、満開の桜が、遠くまで、静かに悠然と並んでいる。誰もいない。一年前、二度とこの桜の園は見ることはない、と思ったのだが………。

少しずつ、少しずつ、止まらないで…………すべての人に美しい日が訪れますように。