3月3日、桃のお節句、叡と結婚して55年。

昨年の3月3日。笠井叡新作・天使館ポスト舞踏公演『牢獄天使城でカリオストロが見た夢』世田谷パブリックシアターで初日を迎えた日。それは新旧の天使館メンバー17人が出演した天使館として初の記念すべき公演だった。いつもは制作側にいる私も、その日は出演者のひとりとして車椅子に乗って舞台上にいた。忘れがたい思い出の日。

同じ日、拙著『畑の中の 野うさぎの滑走 一匹のトカゲが 焼けた石の上を 過った』が上梓され、パブリックの楽屋に真新しい本が届く。制作してくれた若い編集者たちの温かい心がこもっている本。何と嬉しいことだろう!

アートディレクター榎本了壱さんが『畑の中の〜』を、3月28日のFacebookで拙著を紹介してくださった。

「………笠井久子さんの日記。2008年3月からのものだけれど、何度も過去の記憶にフィードバックするから、久子さんの全記録(抄)に近い。夫で舞踊家の叡さん、3人の息子(爾示、禮示、瑞丈)たち、大野一雄、土方巽らの舞踏家、舞踊家、数多のアーティスト、文化人たちとの濃密なエピソードの数々。ドイツでの出来事。叡さんの舞踊活動を支える協働の日々。雲母の上に描かれた手紙のように、透明に重層的に綴っていく驚き。表紙カバーには小さな扉がくり抜かれている。これは笠井さんの国分寺のお家の扉で、その原型は、北鎌倉の澁澤龍彦邸にある。3月3日の発行日は、久子さん、叡さんの結婚記念日。恥ずかしながら偶然にも、私の結婚記念日でもある。」

そして、今日の3月3日。あの日も、春の光が満ちあふれた暖かい日だった。羽織袴の大野先生と留め袖姿のチエご夫妻に結婚の証人になっていただき結婚し………式に参列くださった澁澤龍彦さん、矢川澄子さん、土方巽さん、吉岡実さん、加藤郁乎さん………もう疾うに、みなさま旅立たれ………あれから55年………私は今日も水平・垂直(半分寝たきり)生活をしながら、春の美しい青空を眺めている。

さまざまな事おもひ出す桜かな   芭蕉