水越朋のダンス

昨夜、天使館で水越朋のダンスを観た。
木の床に置かれたメトロノームが音を刻む-カチカチ カチ-。スピーカーから聞こえるノイズ、水の音、鳥の鳴き声。混じり気のない、疑いを知らない、子鹿のような肢体、しなやかな動き………。さまざまな線が、曲線、円、直線、点、前に、後ろに、上に、下に描かれる。純粋な音とカラダと動きの透明空間から、仄かな香りと色が滲みでてくる。
今日の午後、史跡公園を一周り散歩しながら、ふと、水越朋のダンスする顔は、どことなくパウル・クレーの天使の顔に似ている、と心に浮かぶ。真っ青な冬空、冷たい風、大寒とはいえ、遠くの国分寺の杜の樹々は、確実に春のひかりを呼吸しるようだ。
 「青が深まるごと、なおいっそう人間に無限への思慮を呼び起し、純粋さや、ついに
  には超感覚的なものへの憧憬を喚起する。青は空の色なのだ」
            カンディンスキー 『芸術における精神的なもの』より