煌く彗星

栗の花が咲く6月。私が子育て真っ最中の頃、我が家の周辺に栗林や柿園が多くあったのに、いつの間にか消えて、広い更地になっている。秋の実りの頃には、地主さんが近所の子どもたちを集めて栗拾をして楽しんだものだが……いまはひっそりとして、子どもたちの明るい笑い声も聞こえない。さみしいなぁ。
アメリア・イアハートという名前を、茅香子先生の英語翻訳の課題で初めて知った。1937年世界で初めて世界一周飛行に挑んだ女性飛行士。同年7月彼女の飛行機は、目的達成寸前に太平洋上で消えてしまう。その後の消息についてはあれこれと語られているが確証がない。宇宙に向かっていち早く飛び出し、彗星のように見えなくなったアメリアは、今でも多くの人の心に煌く星となって生きている。
大空を鳥のように飛びたいという人間の切なる希望が実現しはじめてから、まだ100年しか経っていないのに、今日の地球を取り巻く宇宙環境は、なんと嘆かわしいことか。絶え間なく人工衛星は回り続け、目に見えない電波は飛び交い、人々は飛行機でグローバルにどこにでも移動できるようになったが、その結果、今やコロナ禍が地球上全てに広がり、飛行機は飛べず、燃料はあまり、国と国とがギスギスしはじめ………。ついこの前100年前は、満点の星空に向かって人々の心は、夢と希望で輝いていたというのに………。
課題の翻訳作業はお休みして、その頃のことを調べてみる。
ライト兄弟 1903年世界で初の飛行機を発明。
アメリア・イアハート 1897年〜1932年。1932年女性として初めて大西洋単独横断飛行成功
「翼よ あれが巴里の灯だ」のチャールズ・リンドバーグは、1902年生。1929年プロペラ機でニューヨーク・パリ間の大西洋単独無着陸飛行に初めて成功する。
そして、何より嬉しかったのは、懐かしい飛行少年イナガキタルホと「星の王子さま」のサン=テグジュペリが同じ1900年生まれだった❣️
 星を食べた話 
   ある晩露台に白ッぽいものが落ちていた 口へ入れると 冷たくてカルシュームみたい
  な味がした
   何だろうと考えていると だしぬけに街上へ突き落とされた とたん 口の中から星のよ
  うなものがとび出して 尾をひいて屋根のむこうへみえなくなってしまった
   自分が敷石の上に起きた時 黄いろい窓が月下にカラカラとあざ笑っていた
                             稲垣足穂「一千一秒物語」
1968年6月のある日、京都伏見桃山の婦人更生寮に志保夫人とお住まいの稲垣足穂をお訪したことがある。更生寮に向かう道すがら、辺り一面栗の花の匂いがいっぱいだった。何のお喋りをしたのだろうか、時間も忘れて話し込み、結局、志保さんにお世話になり一泊した。思い返すと何と礼儀知らずだったかと恥ずかしい。温かい先達たちに心から感謝。

タルホと一緒に月を見上げて
タルホと一緒に月を見上げて

空に浮かぶ星の王子さまのヒツジ
空に浮かぶ星の王子さまのヒツジ