病室の窓から空を眺めて

澄んだ青空に雲が流れていく。いつまで見ていても飽きない。
羊の毛のようにもっこりした雲。真っ白なレース糸のような雲。綿毛のようにふわふわした雲。
いっときも休まず、形を変え、悠然と、淡いブルーの大空を右から左に流れていく。
なんと豊かな時間なのだろうか……などと、病室の窓から空を眺めてのんきな時を過ごせるのもあと数日。来週半ばに、忙しい日常の日々がやってくる。
病院という所は、日常とは全く異なる空間だ。トーマス・マンのあの主人公ハンス・カストルプが従兄弟を訪ねてたアルプスのサナトリウムのよう、とまでは言わないが、数日の入院ならまだしも、一ヶ月もいると、身体はともかく、この保護空間に心までも慣れてきてしまうから恐ろしい。でも、窓から見える美しい空の雲を眺めているとー私はこれからどこにいくのだろうか?ー などと、日頃あまり真面目に考えないことが頭を巡り、このかけがえのない時間から離れられない。
首尾よく部品交換をして貰った私の愛するポンコツ車、果たして上手く路上運転できるのかしら?いささか不安でもあるのだが………。
そうだ! あの白い雲のようにー悠々と、たっぷりと、ゆたかにー行こう。