私の時間は私の時間

いつかは読もうと思いつつ読み過ごして来たゲーテの「若きウェルテルの悩み」を読んでみた。リルケが「マルテ」を書き始めたのも20代後半、「ウェルテル」もゲーテの20代半ばの作品。

体の機能は、ますます衰えていくというのに、今まで見えなかったものが、見えてくるから恐ろしい。時間切ればかりだ!
もっと早く出会えばよかったのに、と思ってみても仕方ない。私の時間は、私の時間………頭の中を空にして、ゲーテの「ウェルテル」に耳を傾けているうちに………生きること、死ぬこと、愛すること、かけがえのない自分自身を生きること、意志すること………人間の純粋な魂の言葉が、今この時、私のカラダに静かに響いてきた。

まさしく滑り込みセーフ!

午後、50年来途上の友であるカヨコさんが、美味しいプリンを持っておしゃべりに来てくださった。去年、長いことヨルダンでペトラ遺跡の博物館建設に貢献してこられたご主人を亡くされ………話は自然に、紀元前1200年のペトラ神殿のことに………大きな流れの中で、みんな途上を生きている………カヨコさんのお話を聞きながら、砂漠の中で長い時を経た太古の遺跡が、今、日没の燃えるような朱色の太陽を背にして、私の頭の中に忽然と浮かび上がった。