私は、何時も空を眺めている。

メールアドレスを新しくするにあたって、思い切ってメールサポートに電話する。こういう電話はいつも苦手。嫌だなぁ〜と思いつつ携帯で電話すると、女性の声が「コロナ対策でオペレーターの人数が少なく、ご迷惑をおかけします………今ですと15分ぐらいでお繋ぎできると………」と言う。やれやれではあるけど、どうせ自粛中の身、待つことにした。ぼんやり庭を眺めていると、雨水をたっぷり含んで重たくなった桜の葉の繁みの中から、黒い鳥がわたしの目の前を、左から右にスゥーと横切った。すると、屋根の上の方でキィキィと鋭い鳴声がする。すると、さっきの鳥だろう、今度は右から左にサァーと横切り、もう一羽がその後を追って上方に飛び去った。その素早さに驚いていると、携帯電話が繋がり、オペレーターの「今日は何のご相談でしょうか?」と言う声が聞こえた。それからの私は、しどろもどろ。必死に指示通り携帯の小さなキーボードに入力するもミスばかり。私の理解能力のなさ、スローな動作に、若いオペレーターはよく我慢してくれている……などと思い始めると、ますます、頭が混乱して、ああ、もうダメだ「またの日にお願いするわ、アリガトウ」と程よく言って、電話を切って、ホッとする。
庭に出て上を見ると、梅雨の雲間に青空が透けて見えた。
     人の権利   長田 弘
     木立の上に、
     空があればいい。
     大きな川の上に、
     風の影があればいい。
     花と鳥と、光差す時間、
     そして、おいしい水があれば。
     僅かなもの、ささやかなものだ、
     人の生きる権利というものは。
     朝、お早うと言う権利。
     食卓で、いただきますという権利。
     日の暮れ、さよならまたねという権利。
     幸福とは、単純な真実だ。
     必要最小限プラス1。
     人の権利はそれに尽きるかもしれない。
     誰のだろうと、人生は片道。
     行き行きて、帰り着くまで。
                   

私は、いつも空を眺めている。
私は、いつも空を眺めている。