純白の紫陽花

今日は、2002年、黒姫で亡くなられた矢川澄子さんのご命日。ちょうどその日、亡き吉岡実さんの13回忌の法要が巣鴨のとげぬき地蔵院の真性寺で行われ、お墓にお参りした後、故人のお気に入りのお蕎麦屋さんに親しい詩人や絵描きや編集者たちが集って吉岡さんを偲ぶ和やかな宴がもたれ、梅雨前の美しい夕陽を見ながら帰宅した。出がけに食卓に置いた新聞を広げると、三面の片隅に「矢川澄子さん自死」という記事が目に飛び込んできた。えぇ……………自死ですって? 数ヶ月前に黒姫のお宅に伺って、二人で清々しい新緑の林の中を散歩し、夕食は、庭の春草を摘んできて、澄子さんの天ぷらの手料理。食後は、黒々と深い闇の黒姫の森へ蛍狩りに………夜明けまで、何を話していたのだろうか、すっかり忘れてしまったが………「あなたが結婚した日に、私は澁澤と別れたの。だから、あなたが結婚何年めか、すぐ分かるのよ」と、にこりとした澄子さんの笑顔は忘れられない。翌30日、アキラと共に黒姫に向かった。白い棺の前に純白の紫陽花が一輪置かれていた。生前の燈子さんが挿木をした紫陽花が、今年初めて咲いたのです、と家人の方がそっと教えてくれた。

その日から20年、昨日に引き続き今日も、梅雨入り前の爽やかな夏日。

天使館では、昨日から平山素子さんとアキラの「フーガの技法を踊る」が始まっている。