紗倉まなとシモーヌ・ヴェーユと

初夏の光。桜の若葉が風に揺れている。静かな日曜日の昼下がり。昨日友人が「外出規制で東京の空気がとてもキレイなったのよ」とLINEで言っていた。そういえば、今日の空の青は澄んでる。
新聞で紹介された紗倉まなの「春、死なん」を雑誌群像で読む。まなさんは、27歳のAV女優だそうだ。
面白い、スゴイ!一気の読んでしまった。
新聞のインタビューに「匂いも何もかも、雪でかき消されてしまう。この地で起きたことはすべて過去になってしまう気配がある。それが恐ろしくもあり、美しくもあり」と答える紗倉まなさんのことを、ちょっとネットで検索。なんとも可愛らしいお嬢さん。なんと爽やかで明るく温かい女の子なんだろう!パステルカラーのマシュマロみたい。とても「春、死なん」の冷徹な人間描写の作者と結びつかない。未来から明るい風が吹いてきた…元気がでる。
27歳の頃の私といえば、シモーヌ・ヴェイユに夢中だった。聡明で美しく、誰をも寄せ付けない強靭な意志力を持ち、不幸のどん底の中に光を見出だし、一生肉体の苦痛に耐え、神から一番遠くに離れたところで、消えるように亡くなったシモーヌ・ヴェーユの、思想とか哲学は横に置いて、人間存在に、私は絶大な憧れを抱いていた。子どもが生まれ、手造りで稽古場を建て始め、情熱だけはあるものの経済的裏付けがない生活の日々。ヴェイユは、私の唯一の味方だった。若い頃の美しい思い出!
紗倉まなとシモーヌ・ヴェーユ。何故か私の中で繋がっている。
 たとえ、歳月を重ねた奮闘努力が、少しも報われないと思えるときでも、
 いつの日か、その努力にちょうど見合うだけの光が、あなたの魂にみなぎるものです。
                                    シモーヌ・ヴェイユ

「シモーヌ・ヴェーユ伝」ジャック・カポー/山崎庸一郎、中條 忍訳/みすず書房
「シモーヌ・ヴェーユ伝」ジャック・カポー/山崎庸一郎、中條 忍訳/みすず書房