自爆テロは最終自己表現か 10

人間におけるいかねる悪行も、知識によって越えられある、知識は一切の行為を灰に化することを述べた後、クリシュナはこの仮象の世界について次のように語ります。
これらの成分(グナ)からできている  三種の状態によって惑わされた
この全世界は、これらよりすぐれた、  不滅である予を認識しない。
成分(グナ)からできている、この神巧な  予の幻術(マーヤ)は越えがたいからである。
予ののみ帰依する人は、この幻術(マーヤ)をわたり超える。
迷妄に陥った悪行者たち、低劣なものでも予に帰依しない。  
幻術(マーヤ)によって知恵を奪い去られて、悪魔の状態に止住する。
悪は実体として存在するのではなく、悪を必要とする神々の創造において、必然的に生じる幻術、仮象、鏡像、それらを現実とみなすことによって、現実化されるのです。神々はこの世界の仮象化を完全に意識した存在です。世界に存在するいかなる鏡像をも、意図的に存在せしめた存在なのです。悪は神によって演じられたのです。そしてこの演じられた悪を、現実に変化せしめたのが人間です。だから、神々はこの世界の仮象化がに対して全責任を持った存在です。もしこの「演じられた悪」を初めから理解し、世界の仮象化を人間が意識していたとするならば、神々の創造行為は決して完成しません。なぜなら、人間も神々と全く同じ存在として存在するわけですから、その時、悪自体が成り立ちません。宇宙創造がなされるということは、人間によって、この演じられた悪を事実と受け取られなければならないのです。そして神々が背負うべき責任は、人間がこの神々によって「演じられた悪」を、事実と受け止めることによって生じる、すべての事柄に対してです。人間のなすべきことは、この「仮象の世界」という構造に対して人間が意識し、理解することができるのは、もうすでに悪の可能態が完全な事実性になってしまった後のことであり、その時、人間が如何に、この創造の完成としての悪の世界を前にして、それをいかに引き受けるかということです。そして、悪が完成するということは、宇宙が破滅するということです。人間がおかれた状況とは、演じられた悪を理解することなく、仮象の世界の中にとどまるならば、世界創造の完成の瞬間は、同時に世界の破滅であり、また人間がこの演じられた悪の本質を理解するのは、この世界崩壊の寸前である、ということなのです。そしてまさに現代がその瞬間です。