路傍の花に話しかけられて………。

慢性関節リウマチは厄介な病だ、とつくづく思う。もう50年近くこの病と付き合ってきた。足の指、かかと、膝、頚椎、さまざまな不具合を修理修繕し、さまざまな薬を飲んできても、ジワジワと関節が崩壊し、変形し、カラダの機能が失われていく。新薬が開発されても、治癒ではなく寛解。膝に人工関節を入れてくれたイワサワ先生は、私のリウマチをクラシカルなリウマチだ、とおっしゃった………それはそうでしょう。先生の子どもの頃から、私はリウマチをやっているんですから………。そして遂に去年の復活祭の頃、aufstehen (立つ)ことができなくなり、絶望の極みに陥ったけど……落ちるところまで落ちたら上るしかないんだよ……という亡き父の声が何処かから聞こえ………今は水平+垂直生活を送っている。

リハビリの看護士さんに………背中とベットが糊でくっ付いてしまい、起きられない、と弱音を吐いたら………もう、糊はすっかり乾いていますよ。今日は花曇り、歩くにはとてもいい日です、さぁ行きましょう………と促され、外に出る。

確かに、風は冷んやり………でも、寒くなし………絶好の外歩きの日和。

各家の塀の中から覗いている、つばき、沈丁花、枝垂れ梅、ミモザ………を横目で見ながら通り過ぎると、うしろから甘い香りが追ってくる。路地沿いに、水仙、和すみれ、クロッカスなどが並び……オッ!アルイルナ、ヒサコサン……と声をかけてくれる。「桜の園」には、臨月間近の桜の樹の枝々が膨らみを帯びて、春の曇り空の下、時が来るのを待っている。