近江の国

昨夜、近江の国の、とある小さな鄙びた町に行く。新幹線の米原で近江鉄道に乗り換えると、世界が変わる。というより新幹線が関ヶ原を通過するあたりから変わるのだけれど、そこは何というのか、日常の中に忍び込んでいる、幽界の入り口のような、あるいは夢の世界への入り口のようなところ。だから、近江鉄道はただ乗っているだけで、いい。
泊まった宿のおかみさんは観音様のような、微笑を絶やさず、そして欲が無い。
そこは、蒲生郡(がもう、あるいは、かもぐん)と言うが、それは大石凝真須美によれば、『人を醸(かも)す』ところのこと。日本国を一人の人と見立てるならば、そこは日本の「喉」である。