金子文子と金子みすゞのことを想う。

金子文子と金子みすゞは、ともに1903年に生まれ、文子は、1926年二十三歳の時、獄中で縊死し、みすゞは、1930年二十六歳の時、服毒自殺する。

一方は、大逆事件で死刑宣告を受け、自死するまでも自分自身を生きぬいた「おんなのこ」。

一方は、小さな動植物や幼い子たちの魂を深く慈しみ、悲しみをともに、真の言葉に生きた「おんなのこ」。

私の孫ともいえる歳の若い二人は、訳がわからない今日の状況の中で、ぐずぐず自分の中で空回りして途方に暮れる七十七歳の私を、少しも囚われのない澄み切ったことばで、力強く引っ張ってくれる。一人は、人間存在を客観的に見つめる眼差しを持って。一人は、深い透明な愛の眼差しを持って。この二人の衒いのない生きたことばは、私をホッとさせてくれる。ありがたいこと。

立春とはいえ、今日は真冬の寒さ。夕方散歩に出る。冷たい風の中を、私の壊れていくカラダが、歩く、歩く………生きていることを実感しながら……歩く、歩く…………彼方から若い二人が、私の魂を引っ張ってる………茜色の美しい日没の空に向かって、ひたすら歩こう。

それにしても、二人は同い年に生を受け、苛酷な人生を送り、二人とも若くして自死するとは!

もう一つ。昨年出会ったマルグリット・ユルスナールも1903年生まれ。まだまだ、私には知らないことが多すぎる。