アンジェに雪が降る

アンジェに来て1週間経った。昨夜4回目の『Spiel』の公演を済ませた後、バーでワインを一杯と、という若いスタッフたちに、「またあしたね!」と挨拶を交わして、CNDCを後にした。体の中に燠のように残っている今日のパフォーマンスの余韻が、戸外の冷気に触れていっそう鮮明に甦る。
メーヌ川を挟んで、コンクリートで出来た大きな四角形の現代建築物CNDCの対岸に、今日フランスで現存する城で、もっとも古いアンジェ城が、崖の上に微かなイルミネーションに照らされて、夢のように浮かび上がって見える。なんと美しいことか!なんと清楚なことか!・・・・1000年前には、堅牢なこの城塞で、多くの人々が戦い、夥しい血が流され、どんなにか残虐な殺戮が繰り返されてきたかというのに。
静まり返った石畳の道を歩く自分の足音を聴きながら、心の中で、隣で黙々と歩いているアキラに向かって「今日の舞台面白かった」と呟いた。
お互いの探り合いから始まったエマニュエルとアキラの「SPIEL」の作品創りも、もう4年になろうか。不思議なことに、次第に二人の顔が相似形になってきたではないか。夥しい未生の言葉を流しながら、新しい何かが生まれてくるように。
そして今朝、起きてみると雪が降っていた。昨夜帰り際に、通訳のYUKOさんが「明日は雪ですから、5時15分にエマニュエルが車で迎えにいきます」と言っていたっけ。今夜がCNDCでの「SPIEL」最後の公演だ。