昨日の午後、アンジェから新幹線で1時間、大西洋に面した漁港St.Nazaireにやって来た。エステルが用意してくれた1等車の座席には、パリから乗ってきたと思われる上品な老婦人がふたりが既に座っていて、ポニーテールの髪型で、白いフレームの鼻眼鏡をかけたアキラをチラッと横目で見て、二人で目を合わせフフと笑った。パリのモンマルトル辺りならいざ知らず、こんな片田舎のフランスでは、アキラが国籍不明、年齢不詳の人物に思われるのは当然で、私はむしろ、アキラを見るフランス人の反応を見るのが愉しい。
どんよりとした灰色の冬空がどこまでも続き、列車は、溢れる勢いで流れる水嵩の増した川の側を走って行く。30分もするとナントに到着。昔高校生の頃、ナントの公会議なんて教科書に出てきたなぁ、などとぼんやり考えていると、灰色だった遠くの地平線が、白み始めて薄日が射してきた。雨が止んだのだ。
ティー・ファクトリーの平井さんに、鶴屋南北戯曲賞をお受けになった川村毅さんへのお祝いのメールを送ったら、返事を頂いた。そこに、「おふたりとも、旅の人生ですね」とあった。思い返せば、50年前、アキラがキャバレーのショーで、日本各地を旅していた時と今と、さほど変わりはない。
踊り子人生、自由が何より!だ。さて今夜のSt.Nazaireの「Spiel」は・・・・。新しい時がやってくる。