2008.11.16

過日、写真家の石内都さんから写真展の案内状を頂いた。それは「ひろしま/ヨコスカ」というタイトルで、昨日から目黒区美術館で開催されている。案内状に は都さんの字で「久子さんの写真を出させていただきました」と添えられていた。これは彼女が私を撮った写真という意味である。
都さんが私の写真を撮ることになったきっかけは、確か土方巽さんの命日かなにかで、久しぶりに叡と目黒の稽古場アスベスト館に出向いた2003年の1月 だったと思う。その時、今は亡き元藤燁子さんはまだご存命で、スクリーンに映しだされた土方さんの映像とデュエットで踊られた。踊りを見終わった時、私の となりにいらした都さんが「今度元藤さんの胸元の傷を撮るのよ」と言った。そう言えば以前、彼女が撮った私の長男のお腹の傷の写真が雑誌に掲載されたの見 たことがある。さて「傷なら私にもあるわよ」と言ったのが始まりで、私は都さんのご要望に応じて、その場で彼女の被写体になることを約束した。残念なこと に、元藤さんの写真は、その年の10月に急逝されたため、実現されなかった。
その後、2007年5月に女性の皮膚に残る傷跡、やけどの跡、変形した手や足などを撮った写真集「INNOCENCE」(赤々舎)が出版された。その中に、私の変形した足や手、お尻の傷や胸のやけどの跡などを撮った写真もあった。
奇妙にねじ曲がった私の手足のカタチは、慢性間接リウマチ故であるけど、その病名にあまりこだわってもいられないので、私の成長の有り様がこうなのだと 思っている。人それぞれ成長の仕方はみな異なっているではないか。石内さんの撮った私の写真を見て、自分のカラダでありながら、何と可愛くて、何と滑稽 で、何と愛おしいと笑ってしまった。このフツウでないカタチの私の手足は、私のために毎日健気に働いてくれている。少しづつカタチが変わり、機能が衰えて 行くのにひきかえて、私の心に何かが蓄積されて行くのを感じる。だから私は自分のカラダを恋人のように愛している。
石内さんは傷を持った女性達を”キズアトの女神達”と呼んだ。傷を持った女性達は誰も自分を女神などと思わない。女性達の傷そのものが、内なる光の女神なのだ。
石内都さんの写真は、傷そのものが美しく真実に映し出されている。