雑誌の広告のキャッチコピーに芭蕉の句があった。
“さまざまな事をおもひ出す桜かな”
私が叡と結婚したのは40年前の春。
私が慢性関節リウマチと診断を下されたのは31年前の春。以来リウマチは私と共に成長し続けている。
28年前家族と共にドイツに渡たったのも桜の頃、6年後帰国したのも桜の頃。
17年前、長男の胃腸手術(危機一髪で命が助かった)がきっかけとなって、3年以上に亘る鬱病から次第に光が見えてきたのも桜の頃。毎日、黙々として府中刑務所の脇の道を自転車で長男を見舞いに行く。その時目に入って来た空の青と桜の花の色は今でも忘れられない。
9年前、三井記念病院で頚椎の手術を受ける。3ヶ月の入院。一ヶ月間はベット上で寝たきり状態が続く。或る日、看護婦さんが桜の花びらを取ってきてくれる。うれしかった。押し花にして、いまでも本の間にある。
まだまだ思いだすとさまざまある。桜の頃の思い出は事欠かない。桜の花びらが風に吹かれて舞うように、さまざまな事が心の中に美しく思いだされる。