2008.4.15

稽古場と母屋の間に狭い庭がある。
山吹、萩、紫式部、ぼけ、ゆきやなぎ、紫陽花二種類、椿、くちなし、さるすべり、杏、桜、南天、薔薇、さつき、沈丁花・・・建物の谷間で陽も差さず、おまけに石ころだらけの栄養不足の土地に、少々多すぎる木々が雑然と勝手気ままに、所狭しと植えられている。
食堂からカーテン越しに庭を眺めていると、よく番の小鳥がやってきて、やせ細った椿の枝、萩の枝にぴょんぴょんと飛び移って遊んでいく。お隣の家の庭の方がはるかに広く木々の梢も豊かであろうに、大空から下を眺めると、我家の貧しい庭でも鳥の目に面白いジャングルのように見えるるのか、などと思っていると、やがて何処へやら飛んで行ってしまう。すると、茶と白のしましま模様の野良猫がのっそりと現われて、堂々と庭を横切って行く。この界隈を仕切っているノラのボスである。どうしてか彼は、叡の車の上に乗って居眠りをするのが好きで、叡がそれを見つけると怒って追いかけるが、もちろん猫の逃げ足は素早い。暫くすると又寝ている。ノラの背中の丸みと車の形は相似形で、ノラはきっと叡の車を仲間だと思っている、と私は思っている。