2009.4.16

通訳のマシューは日本映画の研究家だ。特に吉田喜重とか大島渚とか松本俊夫などの映画、1970年代前後の、あのかなり熱い時代の映画を研究しているとい う。私が「私は新宿の歌舞伎町育ちだよ」と言うと「羨ましいなぁ~、新宿に住むのがボクの夢」と答える面白いフランスの青年だ。そのマシューの部屋で夜、 日本映画の上映会をやるから、と誘われた。夕食後、今はCNDCの稽古場となっているが、かつては小学校だった旧い石造りの建物の3階に彼の部屋はあっ た。もう10人くらいのワークショップ生たちがいて、思い思いにワインを呑みながら、マシューの作るつまみを食べていた。みんなが時代物のテレビの前に集 まって、松本俊夫の『薔薇の葬列』の上映会が始まった。画面が小さい上に暗く不安定な画像で音声も聴き取りにくいという悪条件ではあるものの、松本俊夫が 撮ったあの40年前のムンムンした時代ー土方さんの稽古場アスベスト館から叡と二人で朝帰りしたり、北鎌倉の澁澤龍彦邸を前触れなしに訪れて、そのまま泊 まりこんでしまったり、時間があれば仲間と集って新宿の凮月堂、ランブル、スカラ座,などの喫茶店にたむろしたり、お金もないままソロ公演を実行したり、 旧弊な社会権力に立ち向かう破壊衝動に溢れていた時代ーの感覚が、自然にカラダに流れ込んできた。ジュネ、レダ、ボードレール、ゲイ、麻薬、薔薇、オイ デュプス、倒錯、新宿、暴力、反権力、ゼロ次元・・・そして、テレビのヒッチコック劇場でおなじみの淀川長治の「コワカッタデスネ,コワカッタデスネ、そ れでは、サヨナラ、サヨナラ」まで、これはなんという体験なのだろう!落ち着いた中世のたたずまいの香りが今も残る、この日本から遠く離れたフランスのア ンジェで、40年前の新宿を体験するなんて!、