ボゴダへ

コロンビアのボゴダから帰って、もう2週間経ってしまった。やれやれ! 
コロンビアといえば、現在ニューヨークのブルックリンでダンス活動をしているヒメナの母国であり、パパタラの小池博史さんがお好きだという『百年の孤独』を書いたガルシア・マルケスの国でもある。
一度『百年の孤独』を読み始めたが、未だに頓挫したまま。その代わりに、「90歳を迎える記念すべき一夜を処女と淫らに過ごしたい!」との新潮社の本の帯のキャッチコピーに惹かれて、『わが悲しき娼婦たちの思い出』を読んだが、なんと面白かった事か!
2006年4月叡の舞踏学校に入学するため初来日したヒメナは、東京に着いて自分が夢に描いていたのとあまりにも違うので、大粒の涙を流した。でも一夜明けると、彼女は早速中古自転車を買い込み、あちこち走り回りながら古道具屋を漁り、一日で生活必需品ー冷蔵庫、洗濯機、エアコン、その他諸々―を揃えてしまった。日本語はほとんど喋れないのに・・・。その行動力と早業に感心してしまった。彼女のエネルギーは何処から来るのだろうか?
イベロアメリカン国際演劇フェスティバルからの出演のオファーは、数年前から何回もあったが、何時もスケジュールが合わず、今回やっと実現した。出発前は、コロンビアはやっぱり遠いなぁ、とか、麻薬の国でしょ?・・・とか、いささか心配もあったが、丸一日かけて飛んでいってしまえば、案ずるより産むが易しである。
夜、やっとホテルに着き寝ると直ぐ翌朝8時半から記者会見があるという。なるほど、さすがヒメナの国だ。通訳のユキさんに聞いたのだが、大学は朝7時から、あるいは6時半から始まることもあるらしい。休日でも6時から道路工事が始まる。なんといっても、働き者の国らしい。
今回世界各国から170以上のカンパニーが、このフェスティバルに招かれているという。気が遠くなるような規模だ。ボゴダ市の複数の会場で同時に異なったパーフォーマンスが行われるというのに、どの会場も満員らしい。我々の「ヘリオガバロス幻想譚」の5回公演も、連日満員の盛況ぶり。誰がどうやってどう動ごいているのか皆目分からない。オープニングの日にプログラムが間に合わなくても、別に気にしない。そんな懐の大きさが、現地のスタッフの人たちのおおらかさや素朴さの中に見え隠れしている。だから、こんな大規模の芸術祭が出来るのだろう。些細な事は気にしない。シリアスな作品も、娯楽作品でも、劇場で戸外で、老若男女、持てる者持てない者、ともに大きな流れの中で一緒に流れていこうじゃないか・・・・。コトバでは通じないが、ココロは通じる。初めて出会った懐かしい人たちとの恊働作業。何なのだろうこれは!
とはいえ、標高2600mに位置するボゴダでの公演で、「ヘリオガバロス幻想譚」の3人のダンサーたちは、高地トレーニングするオリンピックのマラソン選手の気分を存分に味わった事だろう。