ほんとうのこと

いつも失敗してきた。81歳になってもだ。

私の小学6年生の担任のS先生は厳しい指導で有名で、生徒の父兄(当時は父兄会と言った)たちにとても人気があった。ある日、授業の始まりの「起立・礼・着席」の号令でみんなが椅子に座ると、先生は開口一番「みんなはわたしが出す宿題が多すぎて大変か」と問いかけ「そう思うものは手を上げろ」と言ったので、私はいち早く手を挙げるた。すると、間髪入れず私の頭に先生の持っていた白墨が飛んできた。曰く「お前が私立中学の希望校に受かる様にと思って俺はやっているんだぞ!」と大声でこっぴどく叱られた。わたしは心のなかで(そうか、でも遊ぶ時間がないほど多い宿題は大変なんだ)と呟いた。本当のことを言ってはダメナンダ……おまけに、大人たちの先生に対する信頼度は揺るぎない………その時、わたしは絶対に教師にはならないと決意した。

今思えば、1950年代。親たちは戦後の日本復興に夢中で子どもたちの教育まで目が届かず学校の先生にお任せ。子供たちはどの子も混ぜこぜになって遊びに夢中。先生に頭を小突かれても、怒鳴られても、頭を下げて素直に謝り………子ども同士のいじめ、嫌がらせ、女の子のスカートめくり………いっぱいあったけど「捨てる神もあれば拾う神もあり」の方程式で………子ども同士で丸くおさまった。

今日はそうはいかない。パワハラ、セクハラ、コスハラ………ハラスメントが並んでいる。81歳になった今でも、ホントウのことを口走って失敗すること度々。でも、気にするな、ホントウのことを言おう、と思っている。