分厚い『カフカの日記 新版』が届いた。

今朝は、いつもの外歩きと反対周り(つまり時計回り)に一時間と少し歩いた。途中で出会った中年の女の人が、わたしの帽子に付いている大オニヤンマを見てびっくり。去年の夏流行った虫除けグッズ、なおかさんがくれたものだ。確かに、外側から自分の姿を思い描いてみると自分でも滑稽にみえる。面白いな。

何時も地面をみながら歩く私の頭のなかは、いろいろな想念が、生まれては消え生まれては消える。時には、書きとめなければ、と思うけど、家に着くとすっかり忘れてしまう。思い出せない。どこに行っちゃうのだろう。

顎関節が変形して喉が落ち込んだために発声がうまくできない。人は、私の言うことを聞き取りにくいだろうな、と思う。おまけに声が外に出ないから、わたしは大声のつもりで言っても、人には小さく聞こえるらしい。でも、嘆くことはない。そんなに大声で人に伝えなくてはならないことはない、と思うから。

だんだんとシンプルに生きるようになってきた。

夕方、注文しておいた『カフカの日記ー新版』(みすず書房)が届いた。
ひゃー! 二段組で本文だけで500ページ………カフカさん、わたしも一緒にお供させてください………と心のなかでお願いし、ゆうに4センチを超える真新しい分厚い本を開いた。

「なんと多くの日々が、またしても沈黙のうちに過ぎ去ってしまったことか。今日は五月の二八日だ。ぼくにはこのペン軸を、この一本の木切れを毎日手にとる決意さえないのか。自分にはそういう決意はないのだと、ぼくは本当に思う。ぼくはボートを漕ぎ、馬に乗り、泳ぎ、日向ぼっこをする。そのお陰でふくらはぎの調子はいいし、大腿の具合も悪くなく、腹の調子もまずまずだ。しかし胸はもうすっかりぼろぼろで、それにもし頸(くび)にめりこんでいる頭が…………」(谷口茂訳)