今秋の舞台のための稽古が天使館ではじまった時、みるみる間に灰色の空が濃くなり………春雷!
我が家の構造は至って単純にできている。長方形の箱を三つ縦に並べて、真ん中は吹き抜け、両脇の箱の上下の西側に玄関と書斎、東側に寝室とキッチン。
玄関を開けると風がキッチンを通り抜け、夏は涼しく、冬は吹き抜けの居間を暖めると家全体が暖まる。
2年前の四月、ついに頸椎が脱臼して頭部を支えられなくなった私は、急きょ東の2階にある寝室から吹き抜けの部屋に降りて来た。
以来、吹き抜けの部屋は、病室・寝室・食事の部屋・診察室・美容室・応接間・制作室・飲み会・食事会………になっている。
わたしは今年の12月に80歳になる。ずいぶん多くの人が私のカラダを通り抜けていったなぁ〜。キッチンから中庭の杏の木を眺め………ぼぉーとしているとシジュウカラが花の蜜を啄みに………急に冷え込んできた。
雷もおさまり、天使館の明かりも消え、稽古をしていた連中が我が家に戻ってくる。