未来から記憶の風が吹いてくる

すっかり緑も濃くなり………もう梅雨?と思わせる湿気を帯びた微風が体を通り抜ける。早朝の朝歩き………小さな背中には少々大きすぎるランドセルを背に………思いっ切り走っていく子………うな垂れてボソボソと歩いていく子………赤ちやんを胸に抱っこしたパパの手に引かれていく子………新一年生かな?どんどん私を追い抜いていく………あっ前方から、いつも出会う新米ママささんがやってきた………わたし「そう7ヵ月なのぉ………可愛いおてて、マシュマロみたい!楽しみね。又ね」………とちょっとおしゃべりして………嬉しい気分になり………ひたすら、歩く歩く………今朝の「小鳥の里(わたしの勝手な命名)」の小鳥のお喋りは特別!愉しそうに輪唱している。

夕暮れ時、アキラに促されて2度目の外歩き………「やっぱり木の緑はいいね、真っ赤でなくて」と桜の樹々を眺めながら、髪を緑に染めたアキラが後ろで呟いてる……わたしは「桜の園」の樹々がみんな真っ赤だったらどうなるだろう?…………頭のなかで絵を描いてみる……………史跡公園の大銀杏は茜色の空をバックに黒々と立っていた。

未来から記憶の風が吹いてくる

ヒサコ「覚え書帖」から
「1980年の夏
イゾルデ・クルツ通りを 右に曲がって
地球の表面の 緩やかなまるみを 足裏に感じながら
子供たちの食べ物を求めて 
土地のことばをもたないわたしは
「あぁ だぁ〜れも知らない この地で 
これから 子どもたちと家族5人で 生きていくんだなぁ」
と スーパマーケットに向かって歩いた。」