また、絵を描いた。次第に体が壊れて行く速度が増してきた。特に頭部を支える頸椎の変形が進み、歩行時のバランスが危うくなり……などなど、いろいろあるが、私にとっては40年来の、私のリウマチの体と私の意識の共存生活の流れのうちなので、あまり驚いてはいないものの、身体的な辛さや苦しさが増すと、いい加減、自分を放棄したいな、と心の中に住んでいる弱虫が頭をもたげてくる。アブナイなぁ〜。
絵を描いている時、頭の中に、ローマで見た黒々とした松の色と風にそよぐポピーの群生、パリの街をおおう薄紫の光、ドイツの銀の森の黄金の紅葉、奥入瀬渓流の若緑の空気、春はあけぼの大和三山の黎明、真夏の国分寺の杜……記憶の底から生まれてくる色がいっぱいに広がり、そんな時、私は体を忘れている。色の中に私がすっぽり入ってしまっている。イマジネーションが私をリウマチの体から解放してくれる。
ポスト・コロナの社会がどうなるのか、想像がつかない。今までのように人にも自然にも直接触れて、目に見えない何かを共有し歓び合うような時はもう来ないのだろうか………?
「貧しさは内面にさす美しい光」 R.M.リルケ