「ひかりのはこ」

また一人、天使館で出会ってから、ともに同じ時を生きてきた詩人の片山令子さんが、先に逝ってしまった。
今日、片山健さんから、かねてより病気療養中の令子さんが、今年3月22日、68歳でお亡くなりになったこと、故人の意向で病気のことは知らせなかったこと、あいさつもできずこの世を去ったことで、悲しい思いをさせてしまったことのお詫びのお葉書を頂いた。
今年の初め、令子さんが発行しているリーフレット「ひかりのはこ  9」が、ポストに届いた。
・・・
眼が今の世界を見ながら
過ぎた日の情景を思い出している時
ふたつの映像が重なった世界を
見ているのではないだろうか。
そして今の映像が過ぎた日の映像に
キラキラと今の輝きを移していく。
今は直ぐに総て過去になるけど
過ぎた日々は感情によって幾度も
今になり続けることが出来る。
うれしかったこと
美しかったこと
尊敬したひと可愛かったひと
風のように颯爽としていたひとを
たくさん生き生きと思い出す。
・・・
愛情に包まれたまま眠っている過去を
今に生まれかわらせる。
眼の窓を開けたまま
今と今と今を
過去に写し続けることによって。
美しい日々  ひと  出来事を
思い出すことによって。
あたらしく今を作り続ける
わたしという窓のある世界。
「窓のある世界」から
2018年1月5日発行    画=片山健     発行者・著者=片山令子
ひかりの箱を開けると、真珠のように美しい言葉たちがこぼれてくる。
目には見えないけど、嗚呼、令子さん。あなたの温もりが私を包んでくれる。