『川口隆夫 大野一雄について』を観る

私は、いつもアキラに怒られる「人は、そんなに自分の思い通りにならないんだよ」と………心の中で、そんなことは分かっている、と思わず言いかけるが、待てよ、自分のことは分かっているようで分からないものだ、と思い直す。

先日、諏訪淳「眼窩裏の火事」展覧会場にて特別開催『川口隆夫 大野一雄 について』を観に、なおかさんが車で府中美術館に連れて行ってくれた。雑木林の遥か遠くの空が茜色に染まるころ、美術館前の林の中に、川口さんが出没。戸外と屋内とたっぷり2時間。物質的カラダを失っても尚、おどり続けられる大野一雄先生の魂は、ひたすら大野先生の動きをコピーして差し出す川口さんのカラダに、彼方の領域から降りて来て、するりと入った。ナンシーの舞台で聴いた壮大なパイプオルガンの響き。懐かしいピアノ曲の数々………当時の観客の熱気のこもった拍手……でも、今私の目の前で次々と踊られる隆夫さんの踊りに熱気あふれる生々しさはない。張り詰めた静寂の空気の中で、ただひたすら美しい!不可思議な舞台。

会場で懐かしい方々にお会いできたのも嬉しかった。なおかさんありがとう。

今日は1時間アキラと外歩きする。もう春の香りがいっぱい。言葉を探し、歩いて、読んで、音を聴いて………みんなに支えられて………感謝して………おやすみ………。