あるく、あるく、あるく……

朝目覚めると、もう中庭に明るい光が溢れていた。昨日の朝日朝刊に高橋巖先生の死亡の告知が載っていた。
何故か、ここ数日間のふわふわした気持ちが落ち着いた。さぁ、朝歩きに出よう!

あるく、あるく、あるく………と口の中で発声しながら。時折り………あるけ、あるけ、あるけ、あるいは、歩こう、歩こう、歩こう、と発声すると………カラダが急に重くなり、あるく速度が遅くなる………何故だろう?

鳥の鳴き声、道端の草花の色、のそのそ道を横切る鳩、野良猫、子犬を連れて歩く人、走る子どもたち、カラダを通り抜ける風…………と同じ空間をともに……あるく、あるく、あるく………次第に、私のカラダは重力から解放されたかのように軽くなり…………見える世界と見えない世界の境もなくなり………ことばの力に包まれて無心にあるく………あっ、巖先生も歩いている…………。

あるく=「現在形」には、ミステリアスなことばの力がいっぱい詰まっているらしい。