あれから10年……

「天使館 VOL.II」は、2011年4月18日に上梓された。その【編集後記】を読む。
 
 1971年8月から79年8月までの8年間、その稽古場ではもっぱら舞踏の稽古が行われた。同年、笠井の渡独にともない天使館は休館。1985年春、オイリュトミーの研鑽を終えた笠井は、天使館をオイリュトミーの活動の場として再び開いた。
 昨年の秋ふと、文集「天使館.II」を出すのは、今だ、という思いが頭をよぎった。「VOL I」は35年前、当時天使館に舞踏の稽古に通って来ていた若者たちの文章を編んで出版した。VOL IIでは、オイリュトミーシューレ天使館の卒業生たちで結成されたペルセパッサ・オイリュトミー団の団員たちと、シューレ卒業後、様々な道でオイリュトミーを深めている人たちに、原稿を依頼した。
 今年2月になって、次々と手元に届く原稿からオイリュトミーが、ゆっくりと確実に、書く人の「いのち」に結びついていく様がうかがわれて、感銘を受けた。
 3月、南からの花の便りもうれしく、編集作業にも拍車がかかり始めた時の3月11日午後2時46分、東北関東大震災が起こった。一瞬にして多くの「いのち」が失われ、多くの方の生活の根拠が消え去った。
 今、深い悲しみの内にありながらも、35年ぶりに文集「天使館」に寄せられた「コトバ」が、根こそぎ消えた大地の底から、再び、「カラダ」が紡ぎ出す「いのち」に結びついた「コトバ」の芽となることを、私は信じたい。(H.K.)
あれから10年、私は何かを学ぶことができたのだろうか?

「天使館 VOL.II   オイリュトミー」
「天使館 VOL.II オイリュトミー」