ゼルマの言葉

朝、雨はあがっていた。湿った空気のなかに秋があって、少し嬉しい。1時間ほど歩いても汗にならないのも嬉しい。

乱雑きわまる私の小部屋。涼しくなったら片付けようと、一日延ばししていたら………この乱雑さのなかで生きていくしかあるまい……と覚悟し………私の来し方がよくみえるわぁ………と唖然と眺めるていると………重なった本の間から『ゼルマの詩集』を見つけ嬉しくなった……ゼルマの言葉に触れたかったから。

「夕暮れ I」  (秋山宏訳)

空の青、かぎりなく澄み、/ 白い雲もほほえんでいる。

黒い、あるいは緑のたおやかな木々が  / おまえを見つめ、声もなく言うー「ごらん!」

なにもかも、メルヘンに聞き入っているように静かな、/やさしい空気につつまれている。

小鳥たちもみな、うっとりしたように耳を澄ませている/香りしか聞こえない。

勿忘草のうえに落ちた雪のように、/白い雲きらめく。

やわい痛みも青々として、/木々のうえに降りそそぐ。

 

あの木たちは黒か、緑か?/おそらく、木自身もよくわからないだろう。

一つの窓の中で、青から浮き出た/一滴の赤がふるえる。木々が花咲く。

1941年7月14日 16歳10ヶ月

シオニスト運動に熱心だったというユダヤ人少女ゼルマは、1942年12月16日、ナチスの東欧ミハイロウスカ強制収容所で死亡。

憎しみ合いはいつまで続いていくのだろうか?