中嶋夏が、遥か海の向こうメキシコから宇宙の彼方に飛んでいってしまった。春先の冷たい雨の日、中庭に咲くクリスマスローズを眺めながら………メキシコかぁ〜遠いいなぁ〜………ナツゥーと呼んでみると………目の前に宇宙大に広がったナツが顕われた。

ナツとアキラはともにダンサー同士。わたしはダンサーではないナツの話しを聴く。10代の終わりに出会ってから60年。じっくりと3人でお喋りしたのはたった一回とは!
決して大きいとはいえない体にいっぱい病気を抱えて………体の痛み、辛さは決してもらさず………命が尽きるまで踊り………体をするりと抜け出して飛んでいってしまった。

誰にもいえない体の痛みや心配があると、いつもナツから………チャコ、私ね………と始まるラインがきて………アキラはどう?…………やっぱり無理している………踊り子だものね…………と、一人で納得して終わる。私はいつもフムフム聴くだけで、悲しいかな、何もしてあげられない。でもいいの、ナツも踊り子ですもの。

ナツは80歳になる歳まで、子どもにも大人にも、心や体に障害があってもなくても、どこの国の人でも、自分の体を惜しまず舞踏を与え、舞踏を愛していた。本当に、本当に。

今、中嶋夏は私の体のなかにすみ始めた。