嗚呼 ディートリンデ!

「ディートリンデが死んだ!」と、次男のレイジが伝えてきた。えっ………どうしたの? 何ですって⁉︎ ………「キルギスで。コロナで」………。
ディートリンデとどうやって知り合ったのか思い出せない。40年前、私たち家族がドイツに住み始めてから、彼女はいつも存在していた。彼女は出会った人に、分け隔てなく、自然に、当たり前に、心地よく、自分の存在を与える人だった。だから、私たちも自然に、当たり前に、心地よく、彼女の存在を呼吸してきた。
2年前の7月、20年振りに旅行でシュツトガルトを訪問して、ディートリンデに会った。少しも変わっていなかった。私は、知らず知らずのうちに彼女の大きな呼吸に包まれている自分に気づき………心の中で〈ディートリンデ あなたは、真に愛の人ね〉と呟いた。
別れ際、彼女は「ヒサコ 今度、キルギスの子どもたちに会いにいくの。一緒に歌って踊るのよ」と言って、私を強くハグした。それが最期だった。
ディートリンデは、美しい人、温かい人、優しい人、強い人、ドイツ人でもあり日本人でもあり、キルギスの人でもあり………愛の人。
今夜も私は、星空に広がったディートリンデの存在を呼吸している。

40年前、ディートリンデが私に編んでくれた。今でも暖かく美しく私を包んでくれる。
40年前、ディートリンデが私に編んでくれた。今でも暖かく美しく私を包んでくれる。